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【検索用 あおいそらにあいをこめて 登録タグ 2016年 Akali GUMI VOCALOID あ 初音ミク 曲 曲あ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:RINGO 作曲:RINGO 編曲:RINGO 唄:初音ミク・GUMI 曲紹介 似たもの同士なのに全然違いました。 曲名:『青い空に愛を込めて』(あおいそらにあいをこめて) RINGO氏のVOCALOID曲11作目。 2016年12月28日にニコニコ動画に投稿。その後削除されたが、2020年3月3日、「青い空に」という動画名でYouTubeに再投稿された。 歌詞からは「義」「対」などの氏の後発曲との関連性が読み取れる。 歌詞 (動画より書き起こし) 君の思う以上に簡単に 人は殺せるんだ本当さ その白い顔に足首に 花束を飾ろう 感動的な死に様にしたい 目玉照らした先の惨い死体 祈りつつ懺悔を唄いたい もう僕には時間がない 人も神も豚も君もみんな いずれ消えゆくってのにさ いったい何を僕はそんなに 怯えているんだい 死んでゆく後悔 望む綺麗さ きっと繋がり切れないな 雨上がり ぬかるむ 赤い唇 青い空に愛を込めて 仇打つ前に死に際見据え 腐臭放つ前に指吐いて 薄く剥けた口紅直して 思い出 置いて 一歩前へ 折角用意した台詞も 君を怒鳴る無秩序な声も 降りしきる豪雨の中で 終わってしまった 腐りゆく黒髪 捨てる無邪気さ もう二度と笑えないな 空回る涙を 飲み込んで 飛ぶ 舞台装置に愛を込めて 人も神も豚も僕もみんな いずれ消えゆくってのにさ (ああああああああああああああああああああああああああ) いったい何を君はそんなに 怯えているんだい 死んでゆく後悔 望む綺麗さ きっと繋がりきれないな 雨上がり ぬかるむ 白い唇 冷たい紅を移しながら ごめんね甘えちゃって 安い愛だもの きっと長くは 生きられないんだ 捨てきれない意識を 置いて落ちていく 青い空に愛を込めて。 コメント この歌がいっちばんすきです。愛してる -- 名無しさん (2021-08-14 00 19 42) 渇きと全く同じというのは否定しないが、パクリと言うほどそのままではないのでオマージュという扱いでいいのではないかなと。この曲大好き -- 名無しさん (2023-08-18 11 19 34) そのままっていいかたちょっと酷すぎないかw どっちの曲も好きだけど言われるまで気が付かなかった -- 名無しさん (2024-01-13 18 58 12) RINGOさんの曲で1番好きな曲。「参考にしてそうなま○つさんの曲は?」と聞かれたら「渇きだろうなぁ」とは思うけど、そのままってのは悪意のある言い方だと思う。 -- 名無しさん (2024-04-22 18 15 03) 名前 コメント
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目次 プロフィール 概要 外見 元ネタ 他の住民との関わり プロフィール 通名 磯留 五百重(いそどめ いおえ) 種族 妖怪(磯女) 性別 女性 年齢 210歳 身長 157cm 一人称 私 二人称 貴方、◯◯さん 職業 浜茶屋 好きなもの 海、浜辺を散歩すること、日向ぼっこ、海鮮料理、蛇 苦手なもの 水に浸かること、泳ぐこと 対応絵文字 🚢🐍 概要 2022年10月27日から登場。 海岸に現れ、近くを通る人間を呼び止めては生き血をすすると恐れられた妖怪。長い髪を自在に伸縮させることができ、それを人に纏わり付かせて襲撃に及ぶ。人々からその実在を信じられなくなったことにより華胥の京へ移り、現在は蛍火の里に住む。現在は存在を保つのに人の血を必要としなくなったので能力は健在だが襲撃を行わない。 性格はこう見えて優しく強調的で、人間と相容れない関係となり現世を追われてからは、その反省から対する種族全てとの利害を損わないよう気を遣って生きてきた。 海妖の栄螺鬼からは「想像つかんな、五百重さんが人間を襲うところなんて」とまで言われるが、かつては残忍で獰猛な性格だった。 そのような過去を持つため人間に対しては後ろめたい気持ちを持ち、人間を愛する存在に対しては気後れしたり卑屈な態度をとることもある。 海の恵みや美しさを深く愛しており海妖との関係も良好だが、泳げない。 主な登場作は「宵待ち港」など。 外見 裾まで達する長さの黒髪は内側の色が少し明るく、幽霊のように下半身がぼやけている。 色白で伏し目がちのアンニュイな顔立ち。 スレンダーな体型なため身長の割に軽い体重。 外見年齢は20代後半ほど。 元ネタ 「磯女」は九州各地に伝わる女の海妖。 他の住民との関わり 海坂伊佐里 蛍火の住民。彼女と人間との縁に強い関心を持つ
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私は強くなんてない。ただ、大好きな人たちと一緒にいたかっただけなんだ。 ㅤ嫌だ。死にたくなんてない。殺したくなんてない。私を、皆から引き離さないで。大切な皆を、殺さないで。 「殺し合いなんて……嫌だよ……。」 ㅤとめどなく溢れる気持ちを言語に変換していく 。そうしなくては、本当に自分がそう思っているのかも分からなくなってしまいそうだったから。 ㅤ知ってしまった。人間が、同じ人間とも争って殺し合うような出来事が、1000年前の現実にあったのだということ。 ㅤそして知ってしまった。親友の早季のことを大好きだという想いも、呪力で人間を攻撃しないために仕組まれた偽物の気持ちだったということ。 ㅤ分からない。本当に、私は早季のことが好きなのか。本当に、私は殺し合いを望んでいないのか。大人たちに植え付けられ、書き換えられ続けてきた自分の頭の中さえも、もう信じられない。 ㅤこれ以上、知りたくない。早季にも知ってほしくない。大切な関係がひとつ、終わってしまう。だから私は――彼女の邪魔をした。世界の真実を求める彼女の足を引っ張って、虚飾の中に浸かっていく道を選んだ。彼女の隣に並び立てる人で居たいと思っていたのに、足手まといにはなりたくなかったのに、だけどこれでいいとほくそ笑んでいる自分が自分の中にいたのも確かなのだ。 ㅤもはやこれが自分の気持ちであるのかすら分からないけれど――嫌い。いつまで経っても強がってばかりで弱いままの私が嫌い。私を置いて、どこかへ行ってしまう早季も嫌い。 ㅤ色々な想いが交錯し、ぐちゃぐちゃになって。気が付けば、私――秋月真理亜は、本当は大好きなはずの早季と喧嘩していた。 ㅤそしてまだ、気持ちはぐちゃぐちゃのまま。偽物に塗れた自分の、本当の気持ちも分からずに。唯一の会いたい人への想いも、本物なのか分からない。 ㅤ考えれば考えるほど、目に映る世界は目まぐるしく回っていくように見える。 「私は……どうすればいいのよッ!!」 ㅤその場にへたりこんで、虚空に向けて叫んだ。応答なんて期待していない。ただ、頭の中で考えたことなんて、明日には思い出ごと無くなっているかもしれない。大人たちに記憶を弄られて――或いは、殺し合いの果ての死によって。 ㅤ何でもいい。自分がここで何かを思った証を外部に残したかった。 ――ポトッ。 「ヒイッ……!」 ㅤ何かが落ちる音がした。唐突な物音に、背筋が凍りつく感覚に襲われる。その音の正体が、自分のザックから何か支給品がこぼれ落ちた音だと間もなくして気付く。 「鏡……?」 ㅤ美しい装飾が成された丸型の鏡だった。裏面には説明書きのようなものがセロテープ貼りで備え付けられている。 (わざわざ鏡に説明書……?) ㅤ不思議な取り合わせだと思った。鏡など説明されるまでもなく用途は分かっている。もし鏡を用いる文化の無いバケネズミのスクィーラが招かれていることに真理亜が気付いていれば、連鎖的に説明書に疑問を持つことも無かったのかもしれない。しかし結果的に説明書に疑を持ったことで、一周まわって多少冷静になり、おそるおそる説明書に目を通す。 【ラーのかがみ】 『真実を映す鏡。』 ㅤ拍子抜けしてしまうほどに、あまりにも簡潔に纏められていた。そもそも鏡は真実を映すものではないのか。否、厳密には、鏡に映る像は実態に比べ左右対称であり、人は自分の顔を正しく観たことがない。では、そこを矯正すれば真実なのか? ㅤ堂々巡り。ラーのかがみについての疑問は尽きない。だが、その全てがどうでもいい。 「真実なんて、いらない。」 ㅤ説明書に書かれていた二文字が、嫌に重く真理亜の心にのしかかる。真実を追いたがっていた早季と、それを邪魔した自分。どうしても、思い返してしまう。 「真実なんて……ああもうっ!ㅤこんなものッ!!」 ㅤ鏡面の無い裏面を自身に向けたまま持ち上げる。そしてそのまま、鏡面を大地に叩きつけようとして―― 「――はぁ……はぁ……。」 ㅤその手を、ピタリと止めた。別にこの鏡が、自分と早季を繋ぐ要素はまるで無い。だけど、このまま破壊してしまえば、二度と真実を求める早季の隣に並び立てないような気がした。 (――私も、変わらなくちゃ。) ㅤ変革を望むのは、怖い。大切な人との関係が変わってしまう。だけど、変わっていく早季と一緒にいられなくなるのは、いちばん嫌だ。 ㅤおそるおそる、ぎこちないまま鏡をひっくり返しながら――最終的には半ばヤケクソでガバッと覗き込んだ。 ㅤそこに映し出された真実は―― 「……何よ。」 ――相も変わらず、自分の顔そのものだった。 ㅤ拍子抜けだった。覚のデタラメな怪談話を聞かされた時と同じ。前フリの割に、特に何も得るものは無かった。 「……いや、違うか。」 ㅤだけど、それでも。 ㅤいろいろあったけど、やっぱり私は私だ――不思議な鏡のお墨付き、これが真実なのだ。この頭の中をぐるぐると巡っているこの感情が、例え仕組まれたものであったとしても。私がこうしたいという気持ち、それだけはやはりまがい物なんかじゃないんだ。 ㅤ両の足を地に付け、立ち上がる。大丈夫、私は私を信じられる。 ㅤそして、ある種吹っ切れた彼女が、悩んだ末に選び取った道は―― 「私は――早季を護りたい。例えそれが、誰かを殺す道であっても。」 ㅤ殺し合いなんて嫌――先に語った言葉に、何の嘘偽りも無い。だが、それは逃避でしか無かった。殺し合いをやれと言われているのだから、大人の言いつけには従わなければ処分される未来しか待っていない。 ㅤそれに、本当の望みは早季が無事でいることだけ。どんな虚飾であろうとも、胸の内に燃えたぎるこの愛だけは否定させてやるもんか。 ㅤでも、きっとあの子は人を殺さないし殺せない。早季のそういう優しいところを私は好きになったのだ。この世界で生き残れるのは1人だけ。だったら、早季の分まで私が殺さないといけない。 ㅤそしてもし、早季が望んでくれるなら。願いで生き返らせる人は、私を選んでくれたら嬉しいなって――そっと、願いを込めてみる。 【B-6/草原/一日目 深夜】 【秋月真理亜@新世界より】 [状態]:健康 [装備]: [道具]:基本支給品 ラーのかがみ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士たちㅤランダム支給品0~2 [思考・状況] 基本行動方針:早季を優勝させる。 1.早季が蘇生の願いで私を選んでくれたら嬉しいな。 ※ミノシロモドキから世界の真実の一部を聞いた後、不浄猫に襲われる前からの参戦です。 【支給品紹介】 【ラーのかがみ@ドラゴンクエストⅦㅤエデンの戦士たち】 真理亜に支給された道具。モシャスの呪文などで姿を偽っている場合、真実の姿を暴く事が出来るが、それ以外の者にとっては普通の鏡。 Back← 015 →Next 014 ある男の帰還 時系列順 016 自然の摂理 投下順 NEW GAME 秋月真理亜
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目次 プロフィール 概要 外見 神徳 名前の由来 他の住民との関わり プロフィール 通名 海坂 伊佐里(うなさか いさり) 種族 漁業神 性別 女性 年齢 140歳 身長 169cm 一人称 私 二人称 アナタ、◯◯さん/アンタ、名前呼び捨て(※親しい相手) 好きなもの 海鮮料理、海鳥、景勝地 苦手なもの 計算、他人に物事を教えること 二つ名 海境の漁業神 対応絵文字 🌊🪸 概要 2022年10月2日から登場。 かつて離島の漁村で海上安全と大漁を祈願し奉られていた漁業の神。つい最近になって現世から華胥の京へ移った新参者で蛍火の里に居住を構える。 京では蛍火の郊外の漁港にて豊漁を招く神徳を活かした加護を与え、海の平穏を維持するのにも貢献しているため、海境の漁業神の異名をとる。 性格はさっぱりとしていて気風が良く、度量の深いおおらかな心を持つ。勇ましいものを何より好み、本人の言動も荒々しくエネルギッシュで時に破天荒である。一方で他人の心情を察するに敏な一面も持ち合わせ、現世では常に人間に寄り添い篤い信仰を得ていた。村の過疎化により人が離れ、元島民及びその家族に漁業従事者がいなくなったのと同時に現世を後にした。 ひそかに海鳥を観察することを趣味にしていたり、海の美しさを愛おしむような繊細な顔も持つ。 また調理における魚介の捌きも得意で、海鮮料理作りもお手の物。漁獲物を調理し振る舞うこともある。 主な登場作は「宵待ち港」など。 外見 毛先にかけて明るい橙色の入った深い藍緑色の髪を一部三つ編みにした髪型に、吊り上がった眉と目を持った凛々しい顔立ち。目の色は珊瑚色で左目の下に泣きぼくろがある。万年海辺にいるため肌はよく日焼けした小麦色で、化粧はリップのみ。カラーは少しモードな紫。 筋肉質な体型なため体重は身長の割に重め。 外見年齢は20代半ばほど。 海妖の磯留五百重からは「漁港に面する海そのものみたい」な佇まいだと評された。 神徳 豊漁 海洋の生物生産力及び海を巡る生命の循環を豊かにし、水産資源の増加をもたらす。 海上安全 針路を見失った船舶を母港へ導く。 生命の源であると同時に厄難をもたらすこともある海の恐ろしさをよく知っているだけに、京でも海での平穏を願う者の想いに応え続けている。 名前の由来 遠い海神の国と地上の人の国との境界を指す語「海境(うなさか)」と 漁をすることである「漁り(いさり)」。 他の住民との関わり 磯留五百重 蛍火の住民。伊佐里が紡いだ人間との縁に強い関心を持つ
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蓮鬼 瑩蓮(はずき えいれん)🐉💜 (イメージCV M・A・O) 性別 女性 年齢 1500歳(人間換算すると20代後半) 身長 175cm 体重 適正体重よりいささか重い。妥当 種族 東洋龍(蓮霓龍) 役割 桃源郷の護り役、龍王、天を統べるもの、全ての王 一人称 ボク、私(真面目な時) 二人称 君、(名前)ちゃん、さん、くん 好きなこと 徒手空拳、剣術、腕相撲、舞踊、人のお世話、料理、お洒落、可愛いもの集め、花見、宴会、飲酒 苦手なこと 力加減、堅苦しい場所、人が悲しむこと、キノコ類、禁酒 概要 芳春の里の護り役をしている、明るく朗らかな心優しい龍娘。華胥の京の中でもかなりの古株。母親のような包容力を見せたかと思えば幼い少女のように振舞ったりと、何かと掴めない人物。考えて行動しているのか、それとも単にふざけているのか。ふざけているのである。しかし護り役を仰せつかるだけのことはあり、雷や風の力を用いた龍気を操る術や高い戦闘力を持ち合わせており、舐めてかかると痛い目を見る。もっとも、平和な里の中でその力が発揮されることはまず有り得ない。専ら稽古として胸を借りられている。黙っていれば美人。 地上の人妖に寄り添いたいと考えているが、あくまでも瑩蓮は龍族である。そのため他者を悪気なく「小さくて弱いもの」として扱う。実際問題そうであるため多くの人は反発することなく彼女の庇護に甘んじるが、己の強さに絶対の自信を持つ者たちには彼女は徹底的に敵視されている。人のコンプレックスを無意識レベルでグリグリするタチの悪い女である。 天操の力 限られた龍にしか受け継がれない、天を操る力。確約された王位。自在に雨を降らせることも止ませることも、雷を落とすことも出来る、禍福を併せ持つ力。しかし瑩蓮の力はその遥か天まで届く。星の位置や月の大きさすらも操ることが出来るのである。自在に流星を呼び、彗星を従わせる。永遠の夜、永遠の昼間を顕現させ、大地や海をも意のままに操る「天理」そのものの力。 あまりにも破壊力と影響が大きすぎるために、行使の際は慎重を要する。暴走などあってはならない力であるため、款将、莫弥に強い制御術式を施されている。 究極の「支配」 余談 某龍の兄弟から尋常ではない程に重い愛情と執着を向けられているが、本人は過保護だなぁ程度にしか思っていない。いつか人死が起こると某激ウマ赤しっぽちゃんは危惧している 主な関連人物 五行 款将 兄替わりであり学術指南役、実質的な補佐 五行 莫弥 兄替わりであり武術指南役、ボディガード 阿泉 竜香 一番弟子。しっぽがふわふわ 青龍寺 愛龍美 二番弟子。とある事情から庇護下に置いている。 青龍寺 生独 補佐役。非常に険悪な関係。 朝宮 茜 加護を与えている。人間の友達。 久龍 愛茉 瑩蓮の側仕えをしていた女官。妹のように大切
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華胥の京 芳春の里 京の深層、四季の里のうちの一つ。常春の里。桃源郷とも呼ばれるほどに美しい花が咲き乱れる場所。4つの里のうち最も平和な里と言われ、老人やのんびりした気性の者が集まる場所。護り役を務めるのは蓮鬼瑩蓮。 清蓮屋敷 瑩蓮の居宅。非常な広さを持つ大豪邸。里の役所や集会所、避難所を兼ねている。季節外れの蓮華が咲き乱れる池は見物である。 万屋「八百堂」 八須賀百郎の経営する雑貨店。日用品から菓子類、現世から流れ着いたもの、果ては付喪神化したものまでを幅広く保管、販売する店。 薬屋「キントキ」 足柄鬼巫の経営する薬屋。芳春の里の外れの山奥にある。薬の効果は確かだがどれも非常に高価であるため、店を訪れるものは少ない。 蛍火の里 常夏の里。海と山、湖の美しい場所。山に関わる妖怪や水妖も多く住む、4つの里で最も賑やかな里と言われる。若者向けの店が多く、観光客の絶えない場所。神のおわす場であり、禁忌も多い。護り役は彌愬魑鈴禰。 図書館 蛍火の里の図書館。現館長は水面リヴィア。膨大な蔵書数を誇る、探求者の訪れる知識の海。古今東西、現世のものも幻想のものも、または京に住む者が記した本も収められている。禁書棚には接近禁止。 仕立て屋「清風」 水面サナの経営する仕立て屋。種族ごとの体の特徴に配慮したオートクチュールを得意とする。サナの作った服は安眠をもたらし、凪沙の作った服は水難を退ける。 コスメショップ「珊瑚粧」 早乙女麗士が経営するコスメショップ。主に若い女性を中心に絶大な支持を集めている。ウォータープルーフの化粧品も完備しているため、水妖たちにも人気。 御霊鏖山 蛍火の山のひとつ。麓には蚕の神である紡祈のおわす社「御白天蚕社」がある。紡祈の縁結び、夫婦円満の力にあやかり、恋に悩む老若男女が訪れる場所となっている。 紅葉錦の里 雪華の里 酒殷橋 明珠海 天遼界 奈落洞
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それは、バルベルデ共和国大統領を名乗るあの男が、机に広げている地図へと再び視線を巡らせていたときのことである。 叩く間隔がいつもよりも早いノック音が聞こえてきたため、男が「何用だ?」と訊ねると、 「何度も失礼致します。早急にお伝えすべきお話があり、参った次第です」 男が眺めていたものと全く同じであろう地図を手に持ったキャスターが、扉を開けて早足で近付いてきた。 今にも唾を飲み込む音が聞こえてきそうな表情だ。だがそう緊張されても困る。 故に「報告など、何度行おうとも別に構わないだろう。そう畏まるな」と気遣うと、 「恐れ入ります。では手短に」 キャスターはほっとした様子でこう前置きをしてから、 「侵入を許してしまったあの虎共ですが、何の因果か内陸部を真っ直ぐに南下しております」 机の上の地図へと手を伸ばし、人差し指の先で敵が辿ったであろうルートを示した。 なお、持っていた地図は適当な場所に置いた。やはり同じ地図だったのだろう。 「……ほう? 早々に我々の所在地を嗅ぎつけたか?」 「そうでないことを祈りたいものですが……決して楽観視は出来ぬかと」 「だろうな。しかし、何故そのような情報を手に入れられた? 確かな情報なのか?」 「アーチャーが虎共と遭遇し痛み分けに終わった、との報告が上がったのです。きちんと位置も知らせてくれました」 相手の言葉に「なるほど……」と納得した男は、キャスターの指先を注視する。 決して〝ただの偶然だろう〟と慢心すべきではない。男は、キャスターが纏う雰囲気からそう感じ取った。 「ちなみにアーチャー曰く〝パナマとの国境線に向かうのは遅れる〟とのことですが、これについては如何致しましょう?」 「別に構わん……と、言いたいところだが、ティーゲル共の南下は無視出来んな。このままアーチャーにパナマ侵攻を命じるのは危険だ。 いや、奴だけの話ではない。このままティーゲル共を放置して全騎を北上させること事態、悪手だろう。さすがの私でもこの程度は解る」 ここで判断を誤ればただでは済まないだろう。 故に男は、躊躇いもなく「パナマ攻略は一時凍結すべきとみたが、どうだ?」と問いかけた。 「よき選択かと。ですのでここは閣下の身の安全も考え、パナマ侵攻作戦は延期。虎共の駆除を第一とせよと、各英霊に通達しましょう。 また、代わりにホムンクルスを補充し、国境沿いに設置して拮抗状態を保持させておけば、北伐への布石が台無しになることも防げます」 「許す。兵法に関しては私よりもお前の方が数十段は上手だ。各サーヴァントの動かし方に関しても、全て任せよう。文句も言わん」 キャスターからの進言を、男は一寸の間すら置かずに受け入れる。 何せ相手は、こと〝侵略者の排除〟において一級品の逸話を持つ英霊なのだ。 たとえ彼がアーリア人でなくとも、そもそもドイツ人ですらなくとも、その実績はあまりにも大きい。 それ故に男は、手駒を動かす権利の全てすらもキャスターに与えたのである。 「勿体なきお言葉! なればこれより我が軍の目標は、北伐から虎共の駆除へと変更致します。ホムンクルスの補充に関しましては……」 「解っている。私がやるから安心していろ」 「御意に! では早速、内陸部に残るホムンクルスに斥候を命じます。虎共の位置を特定出来れば、相応しき者を送り込みましょう!」 「頼りにしているぞ、キャスター」 「ははぁっ!」 深々と礼をして部屋から去って行ったキャスターを見送った男は、溜息をつく。 落胆からではない。安堵からだ。 「あれが〝当時の我ら〟の同胞であればよかったのだがな……ああ、まったく、惜しいとしか言えぬ話だ……」 そう呟く男は、うっすらと笑みを零していた。 ◇ ◇ ◇ 一方その頃、立香達はというと……例の〝丈夫そうなビル〟へと侵入すると、高階層の角部屋に身を潜めていた。 先だって散々目撃したホムンクルス達の運動能力を警戒しつつ、外の動きを即座に把握出来るようにと考えた結果である。 ちなみに車はというと、きちんと駐車場に停めている。敵地で堂々としたものだが、その方が悪目立ちしないはずであるからだ。 そして未だに意識を取り戻さないケツァル・コアトルは、本人(本神?)に申し訳ないと思いつつも仕方がないので床に寝かせた。 ベッドでもあればよかったのだが、いかんせん部屋にあるのは机と椅子と仕事用らしきデスクトップパソコンばかり。 ケツァ姉、すまん。立香は心の中で謝った。 「さて、我が主……まずは謝罪をさせてほしい。思えば、心の隅にどこか慢心があった。本当に申し訳ない」 「いや……そもそも俺が燕青に甘えすぎてたのがまずかった。慢心って言葉を使うべきなのは、俺の方だ」 そんな幾分シュールとも思える図の中で、立香達は真剣な対話を始めることとなる。 「だから謝る必要は全然ない……その代わりに、教えてくれ。お前が見たことの全貌を、きっちりしっかりと」 「……承知した。では聞かせよう。突飛すぎて笑ってしまうかもしれないが、今から話すのは全て事実だ」 適当に選んだ椅子に座った立香は、同じく近くの椅子へと腰掛けた燕青の言葉を待った。 通信越しに、唾を飲み込む音が聞こえた。恐らくはマシュだろう。 「まず、これは今更マスターに言う必要もないことだが、俺は一対のホムンクルスの片割れを真っ先に処理した。 理由は言うまでもない。片割れの手の甲に、くっきりと令呪が刻まれていたからだ。故に俺はマスター殺しを完遂した」 「ああ。活躍はよく見てた。あの動きは鮮やかで、あんな状況じゃなかったら拍手してたところだった」 「そりゃどうも……だがその直後、俺は気付いたんだ。まだ生きている方のホムンクルスの手にも〝三画の令呪が〟刻まれていることに」 ゆっくりと座したまま最後まで話を聞こう……そう決めていた立香が、無意識に立ち上がる。 燕青を嘘つき呼ばわりするためではない。驚きのあまり、身体が勝手に反応してしまったのだ。 「しかも、それだけじゃない。片割れが死んだ瞬間……〝もう片方の手にまで三画分の令呪が刻まれた〟のを、しっかりと見た」 今度は両脚の力が抜け、逆に椅子へと強制的に腰掛ける羽目になった。 「つまり、奴らは〝どちらもマスター〟であり……そしてどちらかが死ねば〝使われなかった令呪〟が生き残った方へと移る。 俺は〝あの一対のホムンクルスのどちらかがマスターだ〟と認識していたが、それはとんでもない間違いだったというわけだ」 「なんて、こった……」 「そして令呪が刻まれる光景を間近で見た俺は硬直し、その隙を突かれたというわけだ。まったく、魔星の生まれ変わりが聞いて呆れる。 ちなみにこれは言い訳だが、屋根から蹴り落とされたときには、残ったマスターが令呪を使っていた。恐らくアーチャーを強化したんだろう」 「唐突に〝してやられた〟のは、それが理由か。ああ……納得いったよ、燕青」 両の肘掛けを力強く握り締めながら、立香は呟くように答えた。 だがそれ以上のリアクションは返せなかった。話の内容が、あまりにも衝撃的であったがためである。 『なるほど。ならばあの邪剣使いのセイバーが宝具を使う際に、豪勢に令呪を二画も使わせたことにも納得がいく。 あの少年少女ホムンクルスの両方が、それぞれマスター権を所有している……というのなら、単純計算で令呪は六画分。 加えて片方の生命活動が停止した際に、残った令呪が生き残った方に移されるとなれば、使用への忌避感も薄れるだろう』 一方でダ・ヴィンチは今までの敵の行動が理解出来たためか、静かだったのが嘘だったかのように饒舌になる。 といっても、その表情は不愉快そうではあるのだが。 「ちなみにだけども、アーチャーからの蹴りを受けたときには何画使われた?」 「一画だ。つまりセイバーのマスター達は四画、アーチャーのマスターは五画も残してるってことになる」 「そんでもってアヴェンジャーや、まだ知らないサーヴァント達のマスターは六画と……おいおい、インフレ漫画かよ」 『ぞっとするな……』 まったくもってその通りだ……と、立香は頷いた。 「……なぁ、ダ・ヴィンチちゃん、マシュ。例のメンゲレって奴は、ここまで出来るほどの技術持ちなのか?」 そして沸いて出た疑問を即座にぶつける。 ダ・ヴィンチは『うーん』と小さく唸ると『〝記録上では〟そこまでではない。ただの医者だからね』と答えた。 『だが、この粋まで至れる可能性など一切ない……などと断言するのは早計だ。それに……』 「それに?」 『仮にあの〝アーネンエルベ〟が何かしらの収穫を得ており、なおかつその収穫をメンゲレが手にしたとしたら、話は変わってくる』 「アーネンエルベ? 喫茶店か?」 『いや、そっちじゃない。先史時代や神話時代の北欧人種が世界を支配していた、という説を裏付けるために設立された機関の名だ。 彼らは研究に際し、科学的な視点のみならず魔術的な視点からもアプローチをかけていた。だから彼らが何らかの収穫を得ていれば……』 「医術と魔術を合体させて、凄いことが出来る様になっててもおかしくない……と」 『そういうことだ。あり得ない話ではない。だが南米での逃亡生活中にそんな暇があったかどうかは怪しいところだが……ね』 「おいおいダヴィンチちゃん、随分と歯切れが悪いじゃんか。どうした?」 立香の言葉に便乗するように、燕青も「おう、そうだそうだ」と茶々を入れるかのように声を上げる。 するとダ・ヴィンチは『頭の痛い話なんだが……相変わらずこちらでも、意見が割れているところなんだ』と溜息交じりに答えた。 『特異点で何を、という話だが……そもそもヨーゼフ・メンゲレは、1979年に死亡している。その特異点が1995年だから、十六年前だね』 『更に情報を付け加えますと、1992年に遺骨をDNA鑑定に出したところ、見事にメンゲレ本人のそれと一致しています』 「……そこらへんの無理ゲー部分を、聖杯で解決させたんじゃ?」 「いや、待てマスター……俺も今思い出したところだが、カルデアの連中は〝メンゲレが黒幕だ〟と断定しちゃいなかった」 「そ、そういえば確かに、言われてみれば……」 燕青から指摘を受けるまですっかり忘れていた。 カルデア側は〝ナチスドイツが関わっている〟と考えているだけで〝メンゲレが黒幕だ〟と断言してはいない。 むしろメンゲレありきで質問してしまったのは立香の方である。 『そもそも彼が大戦中に行った〝双子を使った人体実験〟は全て失敗に終わっている。医者としてはともかく、研究者としては〝ヤブ〟だ。 仮に潜伏中に、燕青を出し抜くほどの特殊なホムンクルスを製造出来るまでに成長したとしても、そのまま〝次〟に繋がるとは思えない。 それに黒幕は〝大統領〟だ。私は、メンゲレの意志を継いだ者か、ナチスに罪を被せて情報を攪乱させている別人が黒幕では、と思っている』 『運命づけられた死を乗り越え、潜伏中に腕を磨き、魔術の仕組みをも理解し、政治を学んで大統領というポストに就き、特異点までも作る。 更にそこに至るまでには、まずアーネンエルベが収穫を得ており、メンゲレの手に渡っていなくてはならない……まず前提が厳し過ぎるんです』 「ありとあらゆる運命を味方につけないと、そもそも黒幕になれる器じゃない……ってことか」 「それに潜伏なんていう〝人間不信に陥りそうなほどに気を張ってなきゃいけないようなこと〟を続けながら、となるとなぁ」 「こうなると、ホムンクルスの服装もフェイクに思えてきたな……」 頭痛を我慢するかのように額に手を当て、立香は「何を信じりゃいいんだよ、もう……」と呟く。 『責任は、断言出来ない内に中途半端な情報を晒したこちらにある。そうしょげないでくれ……代わりに、いいことを教えてやるから』 「……まさか」 『先程の対アーチャー戦を見た上でケツァル・コアトルの状態を把握した結果、アーチャーの真名が明らかになった』 「マジか!」 『ああ。これは黒幕問題と違って、安心して報告出来る。加えて、あのセイバーのときよりも確かだと断言しよう』 だがそうして嘆いている内に、喜ばしい報告が飛び込んで来た。 なんと、二度目の真名判明である。溜息交じりに嘆いている暇などない。しっかりと頭に刻みつけておかねば。 立香は「で、一体!?」と急かす。するとダ・ヴィンチはまず、 『〝アドニス〟だ』 と、短く答えた。そしてマシュに『では解説を頼もうかな』と話を振る。 立香は彼女が準備をしている間に〝アドニス〟なる人物に覚えがないかと考えたが、すぐに諦めた。 マシュの解説が、思いのほか早く始まったためである。 『アドニス。彼はギリシャ神話に名を連ねる人物です。母はキプロスの王女ミュラー、父はそのミュラーの父親です』 「ん? 父親が父親ってのは……えっと、祖父ってわけじゃなくて……あー、なるほどね。つまり……」 「近親相姦だねぇ」 『ですがその近親相姦を、ミュラーの父は望んでいませんでした。そうして父の怒りを買ってしまったミュラーは逃亡を強いられます。 終わりの見えない日々。それを哀れんだ神々は彼女を樹木に変え、逃亡の手助けをします。そしてその木から産まれたのがアドニスです。 そんな彼を見た美の女神アフロディーテは一目で恋に落ちましたが、冥界の神ハデスの妻である女神ペルセポネに、彼の養育を任せました』 ここまで聞いて、立香は「おっと、嫌な予感がするぞ」と呟いた。 『するとペルセポネまでもがアドニスに恋をしてしまいます』 「嫌な予感当たった!」 『やがてアドニスが美少年に育つと、大方の予想通り、二柱の女神は美しいアドニスを巡って喧嘩を始めてしまいます……。 そこで天界からの審判を仰ぐことになったわけですが、なんと天界はアドニスのスケジュールをきっちりと定めるという解決法に出ました。 一年の三分の一はアフロディーテと共に、また三分の一はペルセポネと共に、残る三分の一はアドニスが自由に過ごす、というものです。 こうして一応は秩序が生まれましたが、当のアドニスはあるとき趣味の狩りを楽しんでいると、巨大な猪に襲われて命を奪われてしまいました』 「かーらーのー安定の猪! いい加減にしろ!」 立香の脳裏に、とあるランサー達の顔がよぎる。 本人達の名誉のために、名前は伏せておくが。 『そしてアフロディーテが悲しみに暮れる中、アドニスの身体から流れる血からアネモネの花が咲き乱れたといいます』 「…………え? 終わり?」 『はい』 などと考えている内に、アドニスの物語は唐突に終わった。 女神の争いに巻き込まれた挙句、安定の猪で死亡……あまりにも悲運であると言わざるをえない。 『ちなみに、死因となった猪の正体は〝アフロディーテに嫉妬したペルセポネによってけしかけられたアレスだった〟という説もあります』 「聞きたくなかったそんな説」 だが話が短いおかげで、アドニスの宝具が持つ効果に当たりは付いた。要は、エウリュアレの逆バージョンだと考えればいいのである。 加えて二柱の女神を虜にしたという逸話まで持っているというのだから、神性を持つ者に対しては更なる効果を発揮するのだろう。 そしてケツァル・コアトルは神性がどうのこうのという以前に正真正銘の女神なので、相当なダメージを負った……というわけだ。 「困ったな……」 『そうですね……』 「ところでマスター。カルデアに猪のサーヴァントってのは」 「いない」 「よなぁ」 立香と燕青は、なおも意識を取り戻さないケツァル・コアトルを眺め、再び〝困った〟と溜息をついた。 ◇ ◇ ◇ 「きらめくなーみーだはふふふ~ん♪」 誰もいないはずの寂しい町の一角から、小鳥のさえずりを思わせる可愛らしい鼻歌が聞こえてくる。 声の主は、紅色のドレスをまとう可憐な乙女だ。陶器のような白い肌に、くりっとした翡翠色の瞳が印象的である。 「かぜにのりーふ~ふふふふふ~ん♪」 優しい羽毛を思わせるふわふわな癖毛は腰まで伸び、陽の光を浴びて金色に輝いている。 女の好みが相当斜め上でない限り、世の男性は彼女を〝美しい〟と思うであろう。当然、全会一致でだ。 「つきあかりーふ~ふふふふふ~ふ~ふ~ん♪」 だが、そんな乙女の背後には……例によって男女一対の幼いホムンクルスが無表情で立っている。 何故なのか。答えは単純だ。この可憐な乙女の正体が、サーヴァントであるが故である。 「ふ~ふ~ん♪ ふ~ふふふ~ん♪」 「お待たせしました、バーサーカー」 「あっ、やっと来たぁ~」 そんな彼女の前に、一人の少年が現れた。 手の甲に令呪が刻まれていない、純粋に少年兵として生み出されたホムンクルスだ。 その彼にバーサーカーと呼ばれた乙女は、鼻歌を止めて「ねぇねぇ。斥候、終わったのぉ?」と訊ねた。 そして相手が「はい」と答えると、乙女改めバーサーカーは「うふふ、お疲れ様ぁ」と間延びした声で相手を労った。 「それじゃあ、案内お願いねぇ」 「はい」 「戦うのは手伝わなくていいから、始まったらすぐに逃げてね~? キャスターさんと大統領さんも、そう言ってたし~」 「はい」 斥候役のホムンクルスが歩き出すと、バーサーカーはコンクリートの地面に〝突き刺していた〟大剣を「よいしょっとぉ」と抜いた。 得物の長さは彼女自身の背丈を軽く超えているため、常人が見れば〝何故その細腕で持っていられるのか〟と疑問に思うことは必至であろう。 だが相も変わらずホムンクルス達は顔色一つ変えずに歩く。当然だが、バーサーカーも同じだ。自身の膂力に一切違和感を覚えていない。 「カルデアの虎さんかぁ。どんななのかなぁ。可愛いのかなぁ?」 大剣を手にバーサーカーが呑気な言葉を発する。 だがホムンクルス達も誰もいない町も、しんとしたままであった。 BACK TOP NEXT 第5節:赤い衝撃 南米瞋恚大戦 ダス・ドゥリッテス・ライヒ 第7節:ラプソディ・イン・バーサーク
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平坂よみのすけ制作 蓮鬼 瑩蓮 妲鬼 氷凍慧 鴉冴鬼 暮葉 彌愬魑 鈴禰 比良菓 飴 五行 款将 五行 莫弥 酒々之麹 朱呑 紡祈 咲梨 三鬽薙鬼 恭火 ソフィア=プレコニシオン-ラプラス 星見 晴明 音無 琥珀 海皇淵 瑠奏 カーティス・フォン・ファフニール 伽神籬宮姫 藍萃 勇輝氏制作 朝宮 茜 毬嶋 栗鬼 渦桐 旋 愛沫 鳴流 堕魂 蝋火 真新 冬透 八須賀 百郎 足柄 鬼巫 早乙女 麗士 レイガ=グレーシア アルフレート=フォルモンド ロビン=パッチハート ジャック=イグニス スティーナ=ゴルゴニア 狭咬 影二郎 空峰 嵐鷲 蟹乃むらサメ氏制作 雨音 シト スカルヘッド PD-00F/ヒスイ 寒冷 チカ 寒冷 チヨ 藁葉 川太郎 FW-00S/ペリドット ノア・九条・アークライト Kの⑨番氏制作 鷹咲 美由 錫原 真波 明方 白雪 獅月 理乃 鷲宮 桃羽 錫原 凪沙 水面 リヴィア 水面 サナ 成田 嶽章 東雲 翔希 鷹咲 霧玄 天墨 多操 黒曜 爪舞 宵空 奏夜花 シャーリィ サラトガ ぐれあ氏制作 青龍寺 愛龍美 阿泉 竜香 世古 隼光 青龍寺 生独 久龍 愛茉 上狼塚 碧凛 上狼塚 晶 八重桜氏制作 海坂 伊佐里 磯留 五百重
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華胥の京 「扉の向こう側」「薄皮隔てた幽世」「忘却の彼方」「とこしえの楽園」など様々な呼び方をされていた名前のない世界を、地母神彌愬魑鈴禰が吸収、開拓した神域。 表層である酒殷橋、深層である四季の里の2層構造になっている 「京」という言葉に似合わず、とてつもなく巨大な神域である。
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第3章 みんなトリガーハッピー 秘密工場包囲突破制圧戦 コードネーム『マス・プロダクション』、『資本企業』での制式名称『アイリス』。 それが今回問題となっているオブジェクトであった。前回の戦いで得られた資料を解読していくと これまた資本企業に属するどこぞの企業が新型のオブジェクトを建造中だと言うことがわかった。 「今回の件を説明すると、珍しく真っ正面からの情報戦に『資本企業』が『情報同盟』を上回った形みたいね。『情報同盟』の諜報部隊が用意していたダミーカンパニーが逆に『資本企業』の調査会社、つまりカウンター諜報部隊に取り込まれてしまった。『資本企業』らしく、お金で縛り付ける形で」 「なんて言うか、珍しく本当に間抜けな話ですね」 水着のフローレイティアさんがサングラスを付けてビーチベッドに寝そべり、状況を説明していく。 「敵は『資本企業』に所属する民間宇宙開発を標榜するベンチャー企業。『プライベートオブジェクト』。例の宇宙馬鹿がやってた毎号なんとかオブジェクトの発売元よ。そこが厄介なオブジェクトを建造している。出来ればこれを破壊、もしくは鹵獲したいってわけ」 「なるほど俺たちに何をさせたいのかなんとなくわかりましたけど……なんか思いっきしバカンス気分ですけど大丈夫です?」 ジャガイモたちが珍しく日光浴や海水浴を楽しんでいる。女性兵士たちがナンパ遠征に出ようとする馬鹿どもを鉄拳制裁する中で クウェンサーは何故こんなことをしているんだろうと疑問をぶつけてしまう。 「今ウチの電子シュミレート部門が全力で修羅場ってるのよ。だから私たちは鋭気を養いましょうって事」 「いいのかな? こんな事してて……」 やっぱりこんな事している場合じゃ無かった。 『てきのかずが……おおい!』 「嘘だろ……? この数。本当に本当に、全部オブジェクトなのか!?」 その数、30機。それが今回出てきたオブジェクトの数だった。 およそ3時間前。 「ふざけんじゃねえ! 爆乳! 今すぐ拒否しろ!」 『貴族』ヘイヴィア=ウィンチェル上等兵に上官であるフローレイティア=カピストラーノ少佐が下した新しい指示はお偉いさんの接待。それも最前線でドンパチしながら相手しろと言うもの。 「私だって拒絶したいのは同じ。でも相手は王族の関係者よ。例のモローク家直系一族のハウス・スチュワード…… つまりは、超上級使用人。全権とまでは行かないけど下手な王族より一族当主……つまりは玉座に近い存在よ」 「それでも結局使用人だろ! 本人が慰問にくるってならまだ意味があるのはわかるが、全く違うぞ!?」 「知らないわよ! そもそも慰問じゃなくて、何かしらの確認のために視察したいって話! 全く上は何を考えているんだが」 『貴族』ならヘイヴィアだけしかいないわけでは無い。目の前のフローレイティア少佐も同様に貴族だ。けれど……。 「私は特殊な立ち位置だからね。指揮官としての挨拶とかはするけどそれ以上の事は関与したくないし、下手にやれば 面倒な事になる。王族のお手つきなんて話がでっち上げられたらもうどうしようも無くなってしまうからね」 「けっ……わかりましたよ。やればいいんだろ。で……そのスーパーなバトラーさん、名前は?」 「それが……向こうの希望で自分は今日、この場にはいなかった。いたのは民間の従軍カメラマンのハウス・スチュワード氏と言う事にしてくれとね」 「おいおい……役職名をそのまま個人名にして、結局ばれるだろ。モナーク王族の関係者だってのは俺ら知ってる訳だから」 「そうね……だから、期待しているわ。私の部下が賢明な判断が出来るって事を」 そして、2時間前。謎の戦場カメラマン、ハウス・スチュワード氏が明らかにカメラでは無い装備品を片手に堂々と戦場を歩く姿にクウェンサーたちは目を見張る。 礼服のフロッグコートをぴっちりと着こなし、真っ黒のサングラスを身につけた長身の黒人。 両手に『正統王国軍』のサブマシンガンを2丁持ち歩くその老人男性は何というか、場違い感とステゴロの強者を兼ね備えた雰囲気である。 SHIMAGUNIのコミックとかに描かれるようなスーパーバトル爺さんと言ったその礼服サングラス老黒人、ハウス・スチュワード氏はジャガイモ達の前に立ち止まり一言。 「急なご用件で失礼を。私、民間の戦場カメラマン、ハウス・スチュワードという物です。此度は受け入れてくださって大変感謝しております」 「……あんた本当にそのカバーストーリーがいけると思ってんのか?」 ヘイヴィアもさすがに自称カメラマンが礼服両手二丁サブマシンガンという出で立ちには頭を抱えながら応じるしか無い。 「こちらといたしましても急なご用件で、無理を言ってしまったことは自覚しております。後日その辺の適切な謝礼をさせて頂きます」 「……せめて、何が目的か、話せる範囲で話してくれよ……」 「ふむ……無理を言ってしまった事は確かですし、良いでしょう。あくまでも話せる範囲で。始まりは、姫殿下の死に悲しんだとある方が、せめてと……ある技術に救いを求めた事が発端でしょう。 それ自体は恐らくすべての親御さんが一度は願うことでしょう。1度で良いので死者と話したい。それが自分の子供ならなおのこと。醜悪な詐欺師どもにつけ込まれるまでは」 「……死者との対話? 死者蘇生とかそんなぶっ飛んだSFファンタジーを本気で願ったって言うのか?」 クウェンサーが思わず会話に加わる。 死者蘇生、或いは死んだ人間ともう一度話す。それは古代から人間達が望んだ夢だ。けれど、実際問題そんなこと出来る訳が無いのだ。 数千年、下手すれば数万年の人類の夢物語でしか無い。 「ええ、その通り。死者本人と会うことは出来ない。降霊術に希望を見いだす人はいるでしょうが、実際問題降霊術が本物である確証は数百年にわたって一つも提示出来ない。ですがね、一つだけ、死んだ人間とお話をする方法はあるのですよ。厳密には死者本人では無いのですが……」 そこでいったん言葉はとまり、ハウス・スチュワード氏は周囲を見渡す。 「皆様は『デジタル・クローン』という言葉をご存じですか?」 そして、マス・プロダクションことアイリスの秘密工場があるとされている人工の山林地帯に足を踏み入れる馬鹿2人と これまた部外者の2名のチーム。 すなわち、『マウストラップ』こと『リリアン』を操る差押人のエリート少女とハウス・スチュワード氏である。 「なぁ、エリートちゃん。まだ捕虜交換出来ないの?」 「にっていはきまった。1しゅうかんさき。そのあいだにでかせぎだ」 クウェンサーがエリートの少女と話をしながら歩み、ヘイヴィアは周囲を念入りに警戒する。 そんなヘイヴィアを尻目に堂々と胸を張ってまっすぐ突き進むハウス・スチュワード氏。 当然ヘイヴィアは頭を抱え、どう対応するべきかと悩み始める。 「これ俺は間違ってねえよな?」 「そうなんじゃ無い? ヘイヴィア。でもあの人どんどん突き進んでるよ」 「ああ! 待ってくれ! せめて敵の姿が無いか、確認しろォ! プライマリースクールの先公の気分だぜ」 オセアニアでも使用されていた緑地技術によって形成された森は風情だとか自然の持続可能性とやらでは無く まず効率を優先された単一種による森だ。ただし、現在は一面銀世界。 木々には雪が降り積もり、針葉樹の単一森林であるが故に、森の中なのに見晴らしが良くてまぶしい。 「そうだ。俺等は間違っていないんだ」 そこに礼服サングラスの黒人はほどよく目立つ。『正統王国軍』の防寒コート組が浮いてしまう程度には。 「やっぱこれ、俺等が間違っているのか……!?」 「違う、絶対俺等が正しいハズなんだ!」 当然これほどに目立つ存在を見忘れるはずが無い。ついに敵と思われるライフル弾が飛んできた。 防寒コート組に。 「やっぱこれ、俺等が間違っていたッ!?」 「いいからはんげきしろ! 最悪!」 ヘイヴィアがライフルの引き金を引いて応戦するその中、礼服サングラスの男が仁王立ちしながら敵へと 歩いて行く。何故か礼服男には飛んでこない弾丸。どうも敵側も戸惑っており、ひょっとして関係者か 新手の変態かと行動できないでいるようだ。 「お勤めご苦労様です! しかし、用件があり、本日は参りました! 一つ、聞きたいことがございます!! スポンサーのお一人、『殿下』の使者でございます!」 で、もって礼服男の大声に敵味方双方が銃撃を一度止める。 「何考えてんだあの使用人っ!?」 「でも敵が撃ってこなくなったぞ。どうなってんだ」 「責任者へのお目通りを願います! 『姫様』のサンプルの取り扱いについて! 契約違反らしき物を見ました。 そのことについてのご説明をいただきたい!!」 『姫様』。それはいつものジャガイモ達の『お姫様』の事では無く 『皆様は「デジタル・クローン」という言葉をご存じですか?』 『それは、人工知能……いわゆるAIが残されたあらゆるデータを元に個人の人格を再現すると言う物です。この人ならこのように考える。この人はこんな風に発言する。この人ならこの人ならこの人なら……』 『現在の技術力を使えば脳内にチップを搭載することも可能ですから、本人の視覚データや発言データもあれば、恐らく限りなく確実性が上がると考えられています』 『……ここでは「殿下」という単語でお許し願いたい。「殿下」の願いは「姫様」ともう一度会うこと。一族内のごたごたで大変負担をかけた事が『姫様』の死の原因だと悔いておられるのです』 「むろん、所詮機会が再現したしゃべるプログラムに過ぎません。それでも姫様ともう一度会いたい。話がしたい。それが「殿下」の願いなのです』 『そして、「デジタル・クローン」を手がける企業に最高峰の技術、技能、可能性をつぎ込み限りなく本物の 「姫様」の「デジタル・クローン」を資本企業のとある企業に依頼することになったのです。その企業の名前が「プライベート・オブジェクト」。個人がオブジェクトを所有できるようにする企業です。元々並のテクノロジーでは無いのですよ』 『始まりは、何でも個人が宇宙船を乗り回す時代を始めようとか言う野心あふれる人材が集まったことだったとか。宇宙船がいつしかオブジェクトになり、そのために各方面の技術を集め、技術開発集団となっていったのだそうです。もちろん最終目標は個人が宇宙用オブジェクトを乗り回す時代の到来。そのために肉体的な死の克服さえも考えていたそうで』 ハウス・スチュワード氏が大声を張り上げる。確実に聞こえるように。 「こちらが提供した『姫様』のサンプルの使用に契約違反の恐れがあるとの話を聞きました! 責任者のご説明をいただきたい!」 それが、ハウス・スチュワード氏の目的。 銃声はやんで、いつしか敵兵の姿が堂々と見えるようになる。そして、その中から1人の人物が現れる。 ビジネススーツの上に防弾チョッキとヘルメットをかぶり、ライフルを握るその男。ビジネススーツとビジネスシューズが風景に似合わない。 「それは大変失礼を。いささか物騒で鉛玉での歓迎となったしまった事をお詫びいたします。ただし、そちらの兵隊の皆様には出来ればご遠慮願いたい。ビジネスの話に銃口は不要なので」 そう言って自分のライフルを地面に置き、ヘルメットを脱ぐ。そして、ハウス・スチュワード氏にも武装解除するようにとジェスチャー。 「それは大変失礼を。いささか物騒で鉛玉での歓迎となったしまった事をお詫びいたします。ただし、そちらの兵隊の皆様には 出来ればご遠慮願いたい。ビジネスの話に銃口は不要なので」 そう言って自分のライフルを地面に置き、ヘルメットを脱ぐ。そして、ハウス・スチュワード氏にも武装解除するようにとジェスチャー。 「おい! 使用人! やめとけ! こいつ等に交渉なんて! そういう任務じゃ無いんだぞこっちは!?」 「申し訳ございませんが、『正統王国軍』の皆様はただちに帰って――――」 「――これで、彼らも入れてくれませんか? 入れられる場所まででかまいません。事が事ですので」 ハウス・スチュワード氏がドルの札束を出したことで空気が変わった。 「……アポイントメントは取っておられますか?」 「2時間前に今からそちらに行くと電話はしております。それ以上の事はわかりません。急ぎですので」 「わかりました。是非とも面会できるように私どもも全力を尽くしましょう」 『資本企業軍』の兵士たちが一斉に立ち上がり、花道を作って 「それでいいんかい!? 『資本企業』!?」 「くそっ、あぽとるだけであんなりんじぼーなすか。うらやましい」 「あー『資本企業』ってやっぱこんなノリなのね」 色々な意味で諦めた馬鹿2人であった。 案内された小部屋は監視塔内部の物だった。元々誰かが訪ねてくる予定が無かったので 外部から来た人を待たせる事が出来そうな部屋がここぐらいしか無かったのだろう。 札束で簡単に買収される兵隊と言ってもなんだかんだで最低限の仕事はする。 「武器の持ち込みはここまでとお願いします。その先は命の保証が出来ません。あちらのモニターに 営業担当と責任者が映りますので、現状ではこれ以上はご勘弁を。お話をするだけならこれで十分ですよね?」 有無を言わさない迫力。まぁ、確かに話をするだけならこれでいいだろう。そして 「一応念のために言っておきますが、アポイントメントを取ることが今回私どもが受注したお仕事であって あなた方を案内し、すべて見せることではございません。退去をお願いすることもありますので、そのときは即刻立ち去るように」 「そうはいきません。納得のいく話がされない場合は強行突破も考えてございます。一応そのときに備えておくことをおすすめしますよ」 無言の圧力を醸し出すビジネススーツに礼服グラサン男が立ち向かう。 もはや馬鹿2人とエリート少女は置物だ。 モニターに1人の女性が映る。営業担当だというその女性にハウス・スチュワード氏がなにやら色々と聞いているが その内容はほぼ次の通りだ。 『契約違反が起きたと聞いた。状況の確認がしたい。今すぐ説明を求める』 それに対して相手の答えはずーと同じだ。 『そのような事実は現時点では聞いていない。一応確認するが無い物と考えている。その上で騒動を残念に思う』 それで終わり。ハウス・スチュワード氏があらゆる湾曲した表現を多用し 『無いと言うのなら、何故今回の騒動が発生しているのかクライアント兼スポンサーに詳細を報告せよ』 と何度も聞くが答えは変わらない。 礼服サングラスの黒人男性という出で立ちのハウス・スチュワード氏が立ち上がる。 「では、実際に立ち入らせてください。私どもは現状に強い不信感を抱いています。少なくとも私がこの目で 現状を確認しない限りその返答では『殿下』は納得しないでしょう。このまま施設への立ち入りを認めてもらいたいですな」 『それは困ります。せめて数時間前にそのことをお伝えしていただけ無ければ……。軍機が関係する場所も多いので また後日お願いします』 「いえ。それを聞いて、強行突破の覚悟が出来ました。5分以内に返答が無ければそちらがなんと言おうと私は突入いたします」 『……それは困りましたね。では、警備の皆様、その人以外はどうでも良いので、その人を拘束してください。手足の1本は許容範囲で』 「「この流れは……」」 馬鹿2人の予感は的中した。と言うより、遅すぎた。 次の瞬間銃撃戦が始まったのだから。 ヘイヴィアとハウス・スチュワードがそれぞれライフルとサブマシンガンを引き金を引き、クウェンサーとエリート少女が地面に這いつくばって その場か逃げ出せないか、辺りを見ている。 「って、エリートなんだからなんか、すっごい戦闘技術で戦えるでしょ!」 「しゅうきょうばかとはちがうんだぞ! 最悪!」 『資本企業』特有の黄色いエリートスーツの上に『正統王国軍』の防寒コートという出で立ちが故に微妙なチラリズムを発揮しているが そんなこと考えてもいない少女が思いっきり焦ったように声をだす。 「しゅうきょうばかやせんもんのへいたいならいざしらず、えりーとがはくへいせんとくいなんてふつうじゃないからな!」 「「えっ?」」 「おまえたちのだいじなえりーとがはくへいせんしているいめーじあるの!? 最悪!」 言われてみればお姫様がライフル片手にヒャッハーしてるシーンは全く思い浮かばない。 プタナだったらヒャッハーは言わなくても遠慮無く引き金を引いてそうだが。 「言い分はわかった。でも真っ先に逃げるのは違うよな!?」 ヘイヴィアが叫び、エリート少女はすでに部屋の外。 「そもそもわたしは、ちをみるのがにがてなんだ!!」 「「えっ!?エリートだよね!?」」 「おまえたちのなかのえりーとのいめーじどうなってる!?そもそもわたしはえりーとでとりたてにんだ!さしおさえにんだ! かのうなかぎり、いきてつかまえるのがわたしのしごとだ!しんだらしたいいじょうのかちがないだろ!最悪!」 「おいおい……」 「マジかよ」 エリートなのに血を見るのが苦手、可能な限り生きたまま制圧と言う変わり種のエリート少女だったことにクウェンサーが驚き、ヘイヴィアがお荷物が増えたと小さな絶望を抱える中、ハウス・スチュワードのサブマシンガン二刀流が勝負を付ける。 右のサブマシンガンが弾切れ。すぐさま左のサブマシンガンで牽制しつつ、拳銃に持ち替えて敵兵をヘッドショット。 身を隠して、右のサブマシンガンのマガジンを交換。その間にも時折左のサブマシンガンで牽制。 よく見たら腕が2本増えてる。 「「すげぇ……」」 「AIせいぎょのほじょぎしか。あんなつかいかたがあるんだな」 「マガジン交換、或いは牽制にとりあえず弾丸をばらまきたい時に拳銃を持たせるなどしたら便利ですぞ」 『資本企業』兵はすでに戦死したか、うめき声を上げてるだけになっていた。 「若い頃はガンカタという物にあこがれてましてな。しかし上には上がいる。映画のようにスタイリッシュアクションで無双とは行きませんで、このような邪道に走りました。おかげで旦那様に護衛としての能力もまた高く評価されるように なったので痛し痒しでございます」 「スーパー使用人かよ。王族様は格がちげーわ」 「それはさておき、ここを移動しましょう。さすがに増援までは相手しきれません」 よく見たらスーツ武装男の姿が見えない。奴は奴で撤収しているようだ。ひょっとしたら増援とともにやってくるかもしれない。 『資本企業』軍の施設の小部屋と考えるとここに長居するのは悪いことだ。 ドアでは無く、窓をぶち破り、外から走る。先頭にいるのはヘイヴィア。最後尾は、実は戦闘力に疑問が付くらしいエリート少女。 クウェンサーはそんな強い連中の真ん中で周囲を見渡す。 オブジェクトの建造施設としては、不思議な場所だ。雪山で、緑化技術によって山林にされてる場所。 お金大好き『資本企業』にしてはいくら軍事施設だからといってなんだか不自然な場所だ。だってこんな場所を軍事施設として開発するのにお金がかかりそうだもの。 新型のオブジェクトの開発施設にしてもこんな場所じゃなくても良いはずだ。それともこの場所である理由でもあるのだろうか? そんな風に思っていたら、雪山の斜面に作られた奇妙なモニュメントのような構造物を見つけた。 「…………? マスドライバー……か?」 クウェンサーの知識の中にアレを説明できそうな物はそれしか無い。だが、仮にマスドライバーだとしてあまりにも 奇妙だ。アレでは人を乗せた宇宙船なんて打ち上げる事は出来ないだろう。 ただし……。 「おい! クウェンサーなんで立ち止まる!」 「……どこからエネルギーを手に入れている。仮にアレが本物だとして……」 「ごちゃごちゃ言ってないで、危ないからさっさと走れ!」 「待ってくれ! この施設、地下に伸びてるかもしれない!」 ロケット単体で宇宙に人や物を運ぼうとすると、できる限り赤道に近い方がいい。地球は丸い。おまけに重力を振り切る一番の方法は ある程度の高度まで進出した後、地球重力に従って落ちる事だ。うまいこと落ちると、地球に落ちずに地球の重力に引っ張られて 地球が丸いが故にさらなる高高度に猛スピードで突入することが出来る。こうやってロケットは宇宙に到達する。 なので、できる限り赤道に近い方がいい。赤道なら地球が丸いが故に安心して北でも南でも東でも西でも適当な場所に落ちるだけで良いからだ。 「でも、実は赤道じゃ無くても良かったりする。有名なバイコヌールとかは色々工夫して落っこちる形で地球から離脱するんだ。 その工夫がやりやすい経度って奴が南北それぞれにある。普段は世界的勢力の軍事衛星や防空レーダーなんかがこの軌道やこの軌道に何かを進入させやすい場所に変な物を立ててないか監視してるけど、ここはまさにそう言う場所に近いんだ!」 だから、こんな辺鄙な雪山。何かを宇宙に大量に投入したいのであればマスドライバーの動力源が必要だ。 おまけにオブジェクトの開発まで行ってるともなれば……表面から見える範囲だけですむ規模じゃ無い。 「最悪の場合、ここは第2の北欧禁猟区になるぞ! アースガルドみたいなJPlevelMHD動力炉をオブジェクトじゃ無くて施設中心に設置したちょっとした要塞都市であってもおかしくない! 宇宙空間に無数の衛星を打ち上げる研究都市だ!」 そして、轟音が轟く。マスドライバーらしきそれが稼働したようだった。尤もマスドライバーで何かを射出するわけでは無い。 マスドライバーに何かを乗せる搬入口に動きがあると言うだけだ。マスドライバーの搬入口付近が開く。 「おいでなすったぞ……」 「これはこれは……」 「リリアンのほうがかっこいいな」 「……オブジェクト!」 『資本企業』軍の新型機。噂の『マス・プロダクション』こと、『アイリス』。 「「「ん?」」」 1機出撃して、即座に2機目が姿を見せる。3機目が、4機目が、5機目が―――― 「――数がおかしくないか?」 ヘイヴィアの呆然とした感想がすべてを説明していた。 『正統王国軍』第37機動整備大隊の所属オブジェクト、ベイビーマグナムのエリート、ミリンダ=ブランティーニもさすがにこの事態には唖然としていた。その数30機。いくら何でも絶望的な差だ。 即座に白旗を上げても許されただろう。が、彼女はそれをしなかった。自分がそれを許せなかったから……。 「1ぱつも……うたずに……こうふくなんてさすがにいやだ……!」 そして、それは奇しくも 「カピストラーノ少佐!」 「1発も撃たずに白旗を上げるなんて許される立場な訳が無いだろ!」 「しかし、30機です! 無理です! 1対30なんてこの状況下で戦うのは無謀です。上もわかってくれますよ!」 「……お姫様! そっちの感覚でかまわない。1機だけで良いからやれる!?」 ミリンダからの返答は沈黙。フローレイティアさんとしても本当はわかっている。 オブジェクト戦にとって数は重要な要素だ。1対1なら勝てても2対1なら厳しいと言う事例は数多い。 30倍の数相手に戦って勝つなんてオブジェクトとエリートはさすがに存在しないのが現実だ。 「……お姫様。5分耐えて。その間になんとか出来そうならそうする。駄目なら白旗を送信する。と言うわけでおまえ達は急ぎ撤収の準備を!可能な限り100秒以内に全部終わらせろ!!」 「少佐! いくらなんでも!」 『わかった』 「お姫様!?」 ベイビーマグナムの表示の中に300秒のカウントが入る。死のカウントダウン。或いは命のカウントダウン。 ミリンダはそのままベイビーマグナムをアイリスたちの中に突っ込ませた。 最高速に到達、主砲の下位安定式プラズマ砲を辺り一面にばらまく。 (でてきたばかり、じんけいができてないいまなら、ふところにはいりこめる。どうしうちをさけるためにうてなくなる!せっきんせんをするしかない!) ベイビーマグナムは最高速度530キロに到達。この速度で1機のアイリスに突っ込みながら主砲のプラズマ砲をたたき込む。 その直後、1門を除く6門の主砲をこの状況では段数に不安のあるコイルガンで正面真下の地面を撃つ。 轟!! と衝撃波が空間を揺らし、反動と衝撃と慣性の法則がベイビーマグナムの進路をゆがめ、急カーブ。 (今――!) ――すれ違いざまにさらに1機にプラズマ砲をたたき込む。 (せめてちゅうはしてくれたら……ッ!) ベイビーマグナムの敵機の表示が変わる。 【エネミー24 撃破】 【エネミー06 大破】 「えっ……?」 直後、ベイビーマグナムに敵の砲弾がぶち当たった……。 『お姫様!?』 「だ、だいじょうぶ、フローレイティア。それより、こいつら、やわらかい!」 ベイビーマグナムは右旋回。敵機を接近戦で撃破したと言うことは皮肉にも敵機を肉壁として利用する事が出来なくなる。 つまり、同士討ちを気にせず、撃てる。遠慮無く敵のレールガンが次々とベイビーマグナムに向けて撃ってくる。 (よけられない――!) ――操縦桿を握った手を大きく動かす。ボタン操作やタッチパネルを高速で操作する。 FCSの自動計算による……――やってる暇なんて無い。 微調整。 もうカンで良い。 引き金を引いて、 レーザーの照射。 轟!! 空中で敵のレールガンの砲弾が爆発した。爆破の衝撃波が空間にとどろき渡る。 空中での砲弾迎撃。オブジェクトの主砲級レーザーによる対空攻撃の成功。ベイビーマグナム、損害軽微。 「……いける。のこり265びょう。いける」 お姫様が覚悟と自信を決める中、クウェンサー達もまた、数の暴力と戦っていた。 「ただのライフルで軍用パワードスーツ軍団と戦ってくださいなんて無茶を命令する爆乳もこの気持ちをいい加減味わってみろって!」 「むりむりむり。最悪。すたんぐれねーどかえんまくでたいしょふのうなてきはもうむり!」 「君いつもスタングレネード一本で戦ってきた口!?」 「なんでも良いのですが、サブマシンガン二刀流で相手するには厄介ですなぁ……」 『資本企業軍』の軍用パワードスーツ部隊のやたら口径のでかい専用ライフルに狙われ動けない。 50口径のアサルトライフルが放つ銃弾の威力は皆が隠れている壁を2発で粉々に砕いていく。 それでもそこにしか隠れ場所が無いのだから、だんだん押しくらまんじゅう状態。 「おとこどもはまえにでろ!おんなこどもをたてにするな!って、どこさわってるぅ!?最悪!」 「えっ、俺何処触ってるの?つか、もっとつめて、マジで余裕無い!」 「ふわっ!! ほんとうにやめろ、さわんな!!」 「こんな時でもラキスケ出来るとか余裕だなクウェンサー!」 切れ気味のヘイヴィアが手榴弾を投げる。爆発。お返しに大量の銃弾が帰ってきた。 「マジでなんもないの!? エリートって普通の人間より色々パワフルだったりするじゃん!」 「さいむしゃやよにげしたばかをつかまえるのとぐんようぱわーどすーつとたたかうのをいっしょにするな!ええい、もうわかった! むりょくかするほうほうにはこういうのもある!」 エリート少女は一瞬だけライフルを構えて再び隠れる。 「……よし。いける」 「何が!?」 「おまえたちは10びょうだけなにもしないであたまをさげてろ!」 そして、再びライフルを構えて引き金を引く。小さな爆発の衝撃。『資本企業軍』の軍用パワードスーツ1機大破。 「「えっ?」」 「おぇ……。やっぱちはきらいだ」 「なにしたんでしょうか?」 「ばってりーぱっくをらいふるぐれねーどでそげきした。わたしはしほんきぎょうのえりーとだぞ。じこくのそうびのきほんてきなとくちょうくらいわかる」 「なんでもいいぜ! やっぱエリートは頼りになるな! これからも頼むよ!」 手のひら返しのヘイヴィアに言いたいことがあるが、エリート少女はそれを無視する。血を見るのは嫌いだ。ましてや自分が原因になったものは気分が良くない。 とはいえ、エリートという因果な商売の自分がそれを言うのは偽善者っぽくてこれもまた好きでは無い。 (かちょうはいつもたよりなさそうなめでわたしをみていた。とうぜんだな) 『資本企業軍』の軍用パワードスーツ部隊はさすがに1機撃破されただけで止まらない。けれど戦い方がわかった 3人組は銃弾で、或いはハンドアックスで器用にバッテリーパックを狙う。ライフルグレネードは無くても数を重ねれば敵は一度身を引く。その隙に移動を繰り返す。 「で! クウェンサー、地下に行けばなんとかなりそうなのか!?」 「それはわからない!でもこの基地の本命は間違いなく地下だ!」 そして、4人は見つける。 「脳みそ……の工場?」 映画のような培養槽が並びそこに人間の脳みそを模したと思われる何かしらの肉塊がいくつも転がっていた……。 「おい、まさかにんげ――」 「――ではなさそうだよ。ヘイヴィア。これたぶんネズミだ。薬ななんかで無理矢理肥大化させてる」 「…………」 「……これはこれは」 エリート少女が1人沈黙し、ハウス・スチュワードが興味深そうに一つ一つを観察する。 そして、その中の一つにあるラベルを発見する。そのラベルを見たハウス・スチュワードが血相を抱えてなんとか脳みそのような何かをなんとかして取り出そうとする。 「おい! 何しているんだよ使用人!」 「姫様です。姫様の名前が印字されていて!」 「「えっ?」」 「…………はいぶりっとぷろせっさ……。なんでこんなもの……いまさら……しっぱいしたやつなのに」 「……何を知っているのです!? 教えてください!」 ハウス・スチュワードがエリート少女に詰め寄り、身長の違いからか、大男が小さな女の子を高圧的に接している絵面が出来上がる。 「でじたるくろーんのはなしをきいたときからおかしいとおもっていた。たしかにそれはきゅうせいきのころにてーしょうされて、じっさいにつくろうとしたけど、うまくいかなかったんだ。けっきょくえーあいがあたえられたあるごりずむにしたがってかいわっぽいことをするだけのしゃべるきかいでしかなかったから」 「そうか、結局アンジェリナ・リストの問題からは逃げられない。フレーム問題の一つも解決出来ないAIではいかにもそれっぽい言葉を並べるだけだ」 「……だけど、ふれーむもんだいってけっきょくきかいてきなちせいにはいざってときにもしもちょうこうしてしまったら、とりあえずこうする!ってこうどうができないっていみだ。ならさ、きかいてきなちせいじゃなくしればいいんだって」 それがハイブリッド・プロセッサ。生体組織と機械組織……一種のサイボーグ型の演算装置。 「でもあいであはよかったけど、しっぱいした。だって、きかいにできることはきかいにさせて、にんげんにできることはにんげんにさせることがいちばんこすぱがいい。わざわざはいぶりっどにしなきゃいけないひつようせいがないしせいぞうにじかんとかねがかかる」 そんなハイブリッド・プロセッサに目を付けた奴らがいた。ここの奴らだ。 単純なAIシステムではデジタル・クローンは失敗だった? なら生物と機械の両方の演算システムなら? 「たぶん、ねずみをつかっているのはそれがいちばんやすいから……」 「なんてこった。生命倫理って奴は何処に消えちまった? って言いたくなる惨状じゃねえかよ。まだネズミだから マシだけどさ、その理由がカネってところがおまえ達らしいぜ」 「で、なんでそれを君は知っているのさ?」 「かいしゃのこきゃくりすとのなかにはいぶりっどぷろせっさのけんきゅうしゃがのってた。わたしがつかまえたさいむしゃのなかにもひとりいたはず。最悪なんで、こんなところで」 「では、何故『姫様』の名前があるので? よく見れば一つ一つ全部に人の名前が付いてますぞ」 少女は部屋を見渡しながら……小さな声で 「……たぶん、ねずみだけじゃ、たりないんだ。ほんのうてきすぎる。にんげんののうさいぼうをまぜなきゃえんざんのやくにたたない――」 「――その通りだよ君」 直後聞こえた声に全員が反応し頭上の渡り廊下を見る。ヘイヴィアやスチュワードが銃口を向けるそこには 「そう言う物騒なものはやめてくれよ。普通に死んじゃうから」 何故かSMの女王様の格好に白衣を身にまとったお姉さんがいた。 『情報同盟軍』所属のオブジェクト、インビジブル014の乱入はお姫様が4機目のアイリスを撃破したところであった。 残り146秒カウントでの乱入。 『どこからやってきた!?』 『わかりません! お姫様を援護するために展開中の航空部隊の偵察にも痕跡はなく……』 「アクティブ・カニッツァ!」 お姫様はそれを知っていた。以前、警戒するべき敵性オブジェクトの定期講座で教えられたそれ。 事前の諜報活動によって判明した『情報同盟』における名称は『インビジブル014』。 未だ、世界は『光学迷彩』を完成させてはいない。けれど限りなくそれに近づいた機体。 『少佐ァ!? 敵軍に動きあり! まだ新たなオブジェクトを投入しようとしています!』 『何だと……!? 「マス・プロダクション」はいったい何機あるんだ!?』 しかし、戦場の混乱はまだ終わらない。 「お姫様!?」 地下で、唐突に謎の痴女白衣が手元の端末を操作したかと思うと地上の状況が画面に映った。 「あー『情報同盟』め……ちょっと、あいつらのクリエイト005とか言う機体を好きにしてただけなのにあんなに激おこで。 まぁ、スパイ活動も普通にさせてたけどさ。そっちの資料かな? まぁ、いいやちょうど良いからそちらの『正統王国』のオブジェクト共々アイリスのプレゼンテーション用の資料作成に付き合ってもらうよ」 「ふざけるな!? あんた誰だ!」 SMの女王様は鞭の代わりに端末を持っていた。その扇情的な体にやたらでかい胸をアピールするような姿の女性はクウェンサー達に対して意にも介さず、端末を口元に当てて 「アイリス・コンセプトモデルはこのように我々が当初考えていた究極のコストパフォーマンスに優れた『純規格品』オブジェクトとして、すでに完成と言って良いでしょう。しかし、あくまでもコンセプト・モデルであるが故にいささか改良の余地がある事は素直に認めなければなりません」 唐突に、記録もしくはプレゼンの予行演習が始まった。 「オブジェクトは職人芸によって製造されるオニオン装甲用の装甲板を何百と束ねる事でその防御能力を発揮し、JPlevelMHD動力炉のエネルギーによって数多の兵装システムを稼働させる事で莫大な火力を作り出すと言う事を基本とする大型機動兵器です。 従来、職人芸によるオニオン装甲と動力炉の価格の問題からオブジェクトは1機辺り約50億ドルが基本であると言われておりました。 我々はそこにメスを入れたのです」 身振り手振りを交え、時に大きく注目を浴びるように。もしかして、SMの女王様はそのためか? 「アイリスの基本はバイタルパート以外の職人芸を廃止。動力炉の価格問題は徹底的な量産効果による価格の低下。この2点により約50億ドルで最低3機は作れる事を目指した物です。現在のアイリス・コンセプトモデルの価格は約19億ドル。約50億ドルで3機ラインはぎりぎりで満たした……といささか強引ではありますが、主張できるのでは無いでしょうか? しかし、同時に問題があります」 地上には最初の30機も含めると60機のアイリス。それも新たに投入されたアイリスたちは明らかにそれまでのアイリスとは姿形が変わっていた。変わっていないのはカラーリングくらい。 「数を優先したせいで、このように第1世代相手に数の暴力で襲いかかっても瞬殺出来ないという点です。これではいくら安上がりな1機19億ドルでも積もり積もればオブジェクト1機が撃破されただけの損失となり、最後は勝利のコストパフォーマンスに大きな問題となるでしょう」 「そりゃそうだ。お姫様がこんなに頑張れるって事は俺たちが潰してきた機体よりも怖くないって事だ! わかったら――」 クウェンサーの大声の発言はすぐに、 「――ふふっ」 謎の痴女の冷笑でかき消された。 「それ故に、我々はアイリスにさらなる改良と多様性、そして戦術能力を目指すことにしました。カタログをご覧ください!」 その言葉とともに画面に無数の文字情報を表示される。 【アイリス・ローエンドVer.アタッカー】 【アイリス・ローエンドVer.ディフェンダー】 【アイリス・ローエンドVer.モビリティー】 【アイリス・ローエンドVer.スラッグ】 【アイリス・ハイエンドVer.インファントリィ】 【アイリス・ハイエンドVer.アーチャー】 【アイリス・ハイエンドVer.キャバリー】 【アイリス・ドラグーンVer.アウトレンジ】 【アイリス・ドラグーンVer.ミドルレンジ】 【アイリス・ドラグーンVer.クロスレンジ】 【アイリス・オーダーVer.リリアン】 【アイリス・オーダーVer.Project:I-チャイルド】 【アイリス・オーダーVer.フロイライン】 【アイリス・ウォーロードVer.クインビー】 【アイリス・ウォーロードVer.ウォーデン】 「は?」 「おまけに我々はさらなるコストカットの可能性を発見。すなわち、エリートのコストカットです」 彼女はその両腕を広げ、高らかに宣言する。 「ハイブリッド・プロセッサを活用した、デジタルクローン! これらを搭載することでエリートの搭乗そのものをオミット出来ます! 我々が提唱したいのは質のアイリスと数のアイリスによる『ハイローミックス戦略』であり、連携戦術による確実な敵オブジェクトの撃破、並びにその圧倒的な『軍勢』と呼ぶに値するアイリスたちが発揮するであろう抑止力による紛争抑制効果!」 プレゼン用に作ったであろう画像が次々と……まるでゲームのTVコマーシャルのように流れていく。 それらは次のような簡素な単語がでかいフォントでいかにも重要事項であると目に入ってきた。 『防御型アイリス』が防御し、『火力型アイリス』が攻撃、『機動型アイリス』が牽制と追撃を。 最後に『アイリス・クイーン』がアイリス達を率いてだめ押しの一撃必殺を。 最低15機のアイリスが、連携しオブジェクト50機の効力を発揮する事を願って。 エリートを乗せる必要性は無し。後方の安全な場所から基本戦術を入力し、それを基本方針として活動する ハイブリッド・プロセッサによるエリートのデジタルクローンを活用。安全にも配慮。 「これぞ! 我が社が提唱する究極のコストパフォーマンス追求型オブジェクト! 純規格品オブジェクト、アイリスです!」 「ちょっとまって! なんでりりあんのなまえがあるの!? 最悪!」 悲鳴のような声。エリート少女の食い入るような言葉。オブジェクトは通常専用のエリートを用意されている。 逆また言える。エリートは用意された専用のオブジェクトのみを操縦できる。 双方がそう言う風に作られている。にもかかわらず彼女が知らない所で『リリアン』の名前のオブジェクトの建造が進んでいる。 「りりあんはじしゃせいさんだ! おまえたちのよくわからないものじゃない!」 「そうはいっても受注生産の話が来てるんだもの。そっちの上司に聞きなさい。幸いにもまだ製造は開始されてないから今ならキャンセル料も安くてすむわよ」 「なっ……! そんな最悪、ばかな!?」 エリート少女の顔が真っ青になる。その額には大粒の汗が噴き出し、今にも泣きそうな顔を必死で食いしばって耐えている。 彼女のワンカールした髪の毛の数本がが汗で顔に張り付いて、まさに何かあった女の子という雰囲気を醸し出し、彼女の両手は強く握られている。 「さて、ここまでは兵器としてのアイリスの話をしました。ここからは未来の我々の最終目標としてのアイリスについて」 【アイリス・ラバーVer.シティシップ】 【アイリス・ラバーVer.コロニスト】 謎の機体が表示される。想定される機体構造はもはや意味不明の領域だ。強いて言えばアレは 「UFO?」 「おお! オーソドックスなアダムスキー型を目指したかったけどさすがに効率が悪すぎてね」 アイリス・ラバーのラバーは恋人のラバー。 「結局お椀型か葉巻型が適切って事で、どっちもくっつけることにした。名称も悩んだよ。旧世紀で人気なE号、Y型戦艦でもね、E号もY型も実のところあんまり現時点の技術レベルじゃ適切な形状じゃないし、その形状をしていない以上その名前を付けるのもアレだろうって事で、わかりやすく『シティシップ』に『コロニスト』という2系統、2つの名前で通すことにしたんだ。 これでいつでも宇宙人に会いに行けるね!」 その返答に思わず、その場にいた4人全員が耳を疑った。 「……ま、まぁ、人の趣向はそれぞれでですから……。それより質問に答えて頂きたい。何故『姫様』の印字がされてる物があるのか。 確かに『殿下』は『姫様』のデジタルクローンを求めました。しかしそれはまだ完成していないという話でしたが?」 「あー……そちらが提供したサンプルだけでは足りなくてね。同じ年齢のちょうど良い個体が見つかっていないんだよ。ネズミの脳みそだけじゃ無理だから人間の脳細胞が少し必要だって言っただろ? 出来れば目的の人に限りなく近い人間が良い。 貧困層のガキどもからなんとか確保出来ないか、色々ハンティングして、調理しているからそれ待ちなんですよ」 「まて、ハンティング……? 調理?」 「当然でしょう? お金をちゃんと持っている人間ならいざ知らず、カネのない子供なら多少乱暴に扱っても問題は無いですよ。 まぁ、所詮は貧困層。臓器とかでも実はそうですが、健康で栄養運動ストレスの無い富裕層の方が結局は性能が良くて売れるんですよ。 だから、集めたガキどもを半年ほど太らせて遊ばせて、時が来たらそのための費用を回収する。むしろ慈善事業ですよ。 命までは取りませんからね。いささか知的障害は発生するようですが……それは、コラテラルダメージという奴で」 「姫様のデジタルクローンを作るのに…………同じ年頃の娘を使う……そう言う意味で間違っていませんか?」 「ええ、間違っていません。もう少しお待ちください。養殖がそろそろ終わるので。候補が3つほどいますから一番適合する個体を探す意味も込めて実際に製造してみます。完成をお楽しみください!」 晴れやかな笑顔で痴女は言い切った。 「幼い頃にさ、今思えば子供だましな物だったと思う。でも宇宙物のSFを見てさ、惚れ込んだんだよ。 色々な宇宙人にさ。あの日から私は、恋する乙女になったんだ」 「……だからこれ?」 「その通り。私にとってオブジェクトって言うのは都合がいい入れ物だ。宇宙船の! 宇宙人に会いに行く宇宙船を作り出すための都合の良い大義名分、そして都合の良い入れ物だ!」 「呆れた……。おじいちゃんだったら、それもまたロマンって言ったかもしれないけど……」 「きみのおじいさん、君に近づくなって言うんだよ。ひどくない?」 「痴女は子供の教育に悪い」 「ひどいなぁ……子供が子供の教育に悪いって言うのかい?」 「……お姉さん、自分は処女ですってよく自己紹介するけど、アレなんなの? そんな格好して」 「決まっているじゃん。地球外知的生命体と出会ったら絶対にヤりたいことがあるの。私の子宮は 宇宙人の子供を孕むためにある。だからね、そのためにもまず地球人のメスという個体がどういう感じなのか目で見てわかってもらわないと」 「……ごめん意味がよくわからない」 「あーごめんね。さて、そろそろ行くよ。あなたたちの一世一代の大勝負の前に、私は星の海に船出する」 「…………未完成って聞いてるけど?」 「うん、そうだよ。でもあなたたちの大勝負に巻き込まれたら宇宙人に会えなくなっちゃう。大丈夫。未完成だけど時間をかければ光速まで加速出来るし、一応冷凍冬眠装置も用意した。私自身のデジタルクローンだってそれなりの数用意した。 いつか私は必ず、宇宙人に出会う。この恋が終わるそのときまで、私は例えおばあちゃんになっても恋する乙女は大暴走し続ける」 「……普通の人間の男に絶対向けないエロい顔……」 「そう? あなたも真剣に恋をすればわかるわ。恋は戦争、恋する乙女は最強なんだから」